新兵衛の覚え書き

見た聞いた読んだ浮かんだ思い出した……を書き留めています。

ユーカラに出て来る虎から思う事

ユーカラ……アイヌの口承叙事詩である。

叙事詩といえば英雄譚。対人間や動物との戦いの話と思って良い。ユーカラは口承なので、時を経て脚色された部分はあるだろうが、実際に有った事として語り継がれている。

 

私は、ユーカラの内容は知らなかったのだが、ある一つの話を目にして、「?」と思った事がある。

話に虎が出て来たからだ。

アイヌ縄文人の直系子孫とは思っていない私だから、「?」となったのである。

縄文人の直系が何故虎と闘うんだ、と。

鹿や熊を狩って家に持って帰って来る父親の話に続き、「東の方へ行ったら虎が居た。私は虎を殺した」となっていた。

父親が、鹿や熊を家に持って帰って来るというのだから、家族で暮らしている中での出来事の話だと思われる。

お父さんは鹿や熊を狩って来れる強い男、自分も虎を殺した強い男……そんな風景が浮び上がる。

ユーカラは、少年英雄譚が多いのだそうで、これも少年の英雄譚なのだろう。

 

なぜ虎で「?」となったか。アイヌは、樺太と千島と北海道にしか居ないはずなのに、日常の暮しの中に虎が出て来るのは可怪しいからだ。

樺太にも千島にも北海道にも、『虎は棲息していなかった』のに、なぜ虎の話が伝えられているのか。

現在のアイヌ学会(という学会が在るかは知らないけど)は、アイヌ縄文人の直系と言ってるので、アイヌ人は北海道で誕生した事になるが、虎の棲息する地へ移住したアイヌの集団がいたのだろうか。その集団の中に北海道へ帰った者達が居て、虎狩りの話がユーカラに組み入れられた訳?

アイヌは北海道発祥と考えない私は、「なんだ、やっぱりアイヌは大陸から渡って来たんじゃないか」と思ってしまうのだ。